10人の英世、さようなら。

毎月10人の英世とさよならをするブログ。

「国立新美術館開館15周年記念 李禹煥(リ・ウファン)展」を見て。

特別展を見るとき、いつも音声ガイドを借りるかどうするか悩む。
金沢で見た荒木飛呂彦展では荒木さんが出演されていたから借りたし、
上野で見たポンペイ展、植物展、吉田博展では借りなかった。

今回の国立新美術館開館15周年記念 李禹煥(リ・ウファン)展でも
どうするか悩んだ。
ナビゲーターは女優の中谷美紀さん、李禹煥さんご本人も解説として登場されるようだった。
乃木坂駅から国立新美術館までの白くて長いエスカレーター空間を昇りながら悩み、
コインロッカーにスマホ以外の荷物を預け、入場しても私は悩んでいた。
入り口脇の音声ガイド貸出カウンターを見ると、李禹煥展、なんと音声ガイドが無料。
通常600円ぐらいするので当然有料だと思い込んでいた。

さて、どうしよう。
結論から言うと、今回の展示会では音声ガイドを聞かなかった。
現代アートはわからない、それを受け入れるべきだと何となく感じたからだ。

今回の李禹煥展も正直わからなかった。
わからないなりに、注意深く観察すればわかる部分もある。

まず、使われる画材の変化。
大体作成された年代ごとに展示されているし、どの作品にも必ず何で作られたか記載されているので読めばわかる。
同じ作風の中で異なる画材が使われている作品を見ると作者の表現への挑戦を感じたり、
画材を変えられるのは物が多い現代だからこそなのか?と考えてみたりする。


次に、キャンヴァスから読み取れる筆使い。
作品がどんなスピード感で生み出されたかを想像すると楽しい。
ゆっくり丁寧になのか、息を止めて勢いよく作られたのか。
同じ時代に生きる人に制作された作品だからこそ、筆使いを見て何か感じ取れるのではと思ってしまう。

最後に作風の変化。
制作を重ねる中で、色、画材、モチーフ、筆使いなどが徐々に変わり、
毛色が全く違う新しい作品が次に展示されていると、
今まで模索していた中で生み出したい表現に決着が着いた事を知ることができる。
作風と作風の狭間で、終着点を見届けた安心感と新たに挑戦する意気込みの様なものを感じる気がする。

現代アートのわからなさは、自然への畏怖に似ているように思う。
大自然の中では想像を働かせ、傾向や方向性を感じ取ったとしても、
最終的には全てはわからないのと同じで、
わかるポイントを一生懸命数えても、結局現代アートはわからない。
わからないことを受け入れながらも、分析し考え続けることで
自分の中の答えのない問いに向き合うことに繋がることを
今回の李禹煥展を通して学んだ。


◆使った金額:

1,700円

(現時点の残金額:10,000-1,700=8,300円也)

 

◆リンク:

https://www.nact.jp/exhibition_special/2022/leeufan/